溶接の資格の種類を一覧で調べると、アーク溶接等特別教育もJIS溶接技能者もAW検定も同じ並びで出てきますが、この3つは別系統です。溶接の資格は「法令でその作業に就くために要るもの」と「腕前を証明するもの」に分かれていて、混ぜると、取ったのに現場で使えない、ということが起きます。大阪市此花区で鉄骨建方と鍛冶工事をしている柴田工業が、根拠・必要な場面・費用・有効期限を並べて整理します。
溶接の資格は法令系と技量系の2つに分かれる

結論は、目的が違う2系統がある、ということです。片方は労働安全衛生法にもとづく「その業務に就いてよいか」を決める資格、もう片方は日本溶接協会などが運営する「その溶接ができるか」を証明する資格。難易度も有効期限も取る順番も違います。
法令系は「就いてよいか」を決める。落とすための試験ではない
アーク溶接等特別教育、ガス溶接技能講習、ガス溶接作業主任者、金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習の4つです。事業者が労働者を業務に就かせる前に受けさせる義務がある、という形で法律に書かれているので、主語は本人ではなく会社側。内容は安全衛生が中心で、腕を測る試験ではありません。特別教育には修了試験そのものがありません。
技量系は「この溶接ができる」を第三者が証明する
JIS溶接技能者評価試験、建築鉄骨のAW検定、溶接管理技術者。法律で「これがないと働けない」と決まっているわけではありませんが、発注者や元請、鉄骨製作工場の性能評価の要件として求められます。実技で試験体を溶接し、外観検査や曲げ試験にかけて合否を出すので普通に落ちますし、有効期限があるので放っておくと失効します。
法令で必要になる溶接の資格・講習の一覧
法令系は4つ。溶接工として働き始めるなら、まずここを押さえます。費用は実施機関の公表情報を確認した2026年9月時点のものです。
| 区分 | 根拠 | 必要な場面 | 期間・費用の目安 | 有効期限 |
|---|---|---|---|---|
| アーク溶接等特別教育 | 安衛法59条3項/安衛則36条3号 | アーク溶接機を使う業務に就く前 | 学科11時間+実技10時間=21時間。大阪の相場20,000〜32,000円。東大阪労働基準協会は会員11,110円/非会員12,210円 | なし |
| ガス溶接技能講習 | 安衛法61条1項/施行令20条10号(就業制限業務) | 可燃性ガスと酸素を使う金属の溶接・溶断・加熱 | 学科8時間+学科試験+実技5時間。大阪府溶接技術協会は11,100円・2日 | なし |
| ガス溶接作業主任者 | 安衛法14条(免許・国家資格) | アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置を用いる作業での選任 | 学科4科目・計3時間。受験手数料8,800円 | なし |
| 金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習 | 特定化学物質障害予防規則(令和6年1月1日から選任可) | 金属アーク溶接等作業を継続して行う事業場の作業主任者 | 1日・計6時間。建災防おおさかは13,815円(受講料12,000+テキスト1,815) | なし |
アーク溶接等特別教育:溶接工の入口はここ
労働安全衛生法59条3項と労働安全衛生規則36条3号で、アーク溶接等の業務に就かせるときは特別教育を行わなければならないと定められています。時間は安全衛生特別教育規程で学科11時間・実技10時間の計21時間。実務経験は要りません。大阪での費用や実施機関の比較はアーク溶接特別教育は大阪でいくらかかるかにまとめています。
ガス溶接技能講習:ガス切断をするなら必須
特別教育より一段重く、労働安全衛生法61条の就業制限業務に当たります。施行令20条10号で「可燃性ガス及び酸素を用いて行う金属の溶接、溶断又は加熱の業務」が指定され、修了証がなければ就けません。作業中の携帯も義務です。愛知県溶接協会の案内では学科8時間に学科試験と実技5時間が付き、修了試験があります。大阪では大阪府溶接技術協会が11,100円・2日で実施しています。
ガス溶接作業主任者:溶接まわりで数少ない国家資格
溶接の国家資格として検索で出てくるのが、ほぼこれです。労働安全衛生法14条にもとづく免許で、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が試験を実施します。同協会によると選任が必要なのは「アセチレン溶接装置又はガス集合溶接装置を用いて行う金属の溶接、溶断又は加熱の作業」で、装置の種類で線が引かれています。試験は受験資格なし、学科4科目・計3時間、手数料8,800円です。
金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習:2024年に新設
新しい制度なので古い一覧記事には載っていません。令和3年4月1日に溶接ヒュームが特定化学物質に追加され、令和4年4月1日から作業主任者の選任が義務に。当初は2日間の特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習の修了者からしか選任できませんでしたが、令和6年1月1日の改正で、金属アーク溶接等作業に限れば1日6時間のこの講習の修了者からも選任できます。特化物の講習を修了済みなら受講は不要です。
技量を証明する溶接の資格の一覧

技量系の代表はJIS溶接技能者評価試験、建築鉄骨のAW検定、管理側の溶接管理技術者です。法令で義務づけられていないのに現場で求められるのは、発注者や元請、工場の性能評価が要件にしているからです。
| 区分 | 根拠 | 必要な場面 | 期間・費用の目安 | 有効期限 |
|---|---|---|---|---|
| JIS溶接技能者評価試験 | JIS Z 3801ほか+WES規格(日本溶接協会) | 溶接構造物の製作・施工全般。発注者や元請から求められる | 実技受験料は種目別。手溶接N-1F 6,468円、半自動SA-2F 9,779円など。別に学科2,200円と認証料2,860円 | 1年(サーベイランス2回のあと再評価試験) |
| AW検定(建築鉄骨溶接技術検定) | 一般社団法人 AW検定協会 | 建築鉄骨の工場溶接・現場溶接。工場のグレード要件 | 年1回のみ実施。受験申請費+X線透過試験費+機械試験費 | 4月1日から1年。要件を満たせば2回に限り更新可 |
| 溶接管理技術者 | WES 8103(規範文書はJIS Z 3410/ISO 14731) | JIS Z 3400で要求される溶接管理。製作工場の性能評価の要件 | 筆記15,400円+口述25,300〜28,600円+登録申請料19,800円 | 初回認証2年、サーベイランス審査で3年延長、計5年で再認証審査 |
JIS溶接技能者評価試験とは:9つの区分に分かれている
一般社団法人 日本溶接協会が運営する認証制度で、資格は手溶接(アーク溶接・ガス溶接)、半自動溶接、ステンレス鋼溶接、チタン溶接、プラスチック溶接、銀ろう付、すみ肉溶接、石油工業関係溶接、基礎杭溶接の9つに分かれます。根拠規格も別々で、手溶接はJIS Z 3801とWES 8201、半自動溶接はJIS Z 3841とWES 8241、すみ肉溶接はWES 8101です。建設で使うのはほぼ手溶接と半自動溶接、それにすみ肉溶接です。
AW検定は建築鉄骨専用。年1回しかない
建築鉄骨の溶接技量を見る検定で、一般社団法人 AW検定協会が実施します。対象は工場溶接技能者・現場溶接技能者・鋼管溶接技能者・溶接ロボットの4分野、姿勢は下向・横向・立向で、受験申請費は受験者ごと・姿勢ごとにかかります。判定は試験体を外観検査・X線透過試験・機械試験にかけた総合判定。試験は年1回だけで、資格証は4月1日から1年間有効、要件を満たせば2回に限り更新できます。名前の似た基礎杭溶接技能者(WES 8106)は杭の現場溶接向けの別資格です。
溶接管理技術者は「溶接する人」ではなく「管理する人」の資格
WES 8103「溶接管理技術者認証基準」にもとづく資格で、規範文書はJIS Z 3410とISO 14731。等級は特別級・1級・2級です。日本溶接協会によれば、JIS Z 3400で要求される資格であり、建築鉄骨の製作工場の性能評価の要件にもなっています。受験には職務経験年数が必要で、工業高校卒なら1級7年・2級2年。溶接工として現場に立つための資格ではないので、まず取る資格ではありません。
JIS溶接技能者評価試験の中身
技量系でいちばん受験者が多いのがJIS溶接技能者です。記号の読み方、受験資格と有効期限、費用の3点を押さえておけば、求人票の「JIS半自動SA-2F」の意味が分かります。
資格記号は「溶接方法+板厚+姿勢」でできている
手溶接ならN-1F、A-2F、N-2V、T-1Fといった記号が並びます。頭のアルファベットが溶接方法(Nは裏当てなし、Aは裏当てあり、Tはティグ)、数字が板厚区分(1が薄板、2が中板、3が厚板)、最後が姿勢でF=下向、V=立向、H=横向、O=上向、P=管の固定。半自動溶接は頭にSが付いてSN-1F、SA-2Fとなります。
基本級と専門級、そして有効期限は1年
基本級は下向姿勢、専門級は立向・横向・上向と管の溶接です。受験資格は基本級が「1か月以上溶接技術を習得した15歳以上の者」、専門級が「3か月以上溶接技術を習得した15歳以上の者で、対応する基本級の資格を所有する者」。見落とされがちなのが更新で、有効期限は1年。期限の3か月前から期日までにサーベイランス(業務従事の確認手続き)をすると1年延長され、2回繰り返したあと再評価試験(実技のみ)を受けます。
受験料の目安:種目と姿勢で大きく変わる
日本溶接協会が2024年6月3日に改定し、2024年10月1日以降の評価試験から適用している料金表から、建設でよく使う種目を抜き出します。
| 項目 | 金額(税込) |
|---|---|
| 学科受験料 | 2,200円 |
| 手溶接 N-1F(基本級・薄板・下向) | 6,468円 |
| 手溶接 N-2F(基本級・中板・下向) | 8,602円 |
| 手溶接 N-2P(専門級・管の固定) | 23,122円 |
| 半自動 SN-1F | 6,666円 |
| 半自動 SA-2F | 9,779円 |
| 半自動 SA-2P(専門級・管の固定) | 24,662円 |
| 認証料(新規・更新時) | 2,860円 |
| サーベイランス料 | 1,540円 |
大阪の窓口は一般社団法人 大阪府溶接技術協会(大阪市浪速区元町2-8-9)です。申込はWeb申請のe-Weldのみで、会場によって受験できる種目が違います。
溶接の資格の難易度をどう見るか

難易度をひとつの物差しで並べることはできません。「落ちるかどうか」と「維持が大変かどうか」は別の話だからです。
講習型は原則落ちない。技量型は落ちる
アーク溶接等特別教育には修了試験がありません。ガス溶接技能講習と金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習には修了試験がありますが、講習で扱った内容から出ます。一方でJIS溶接技能者とAW検定は実技試験で、試験体を外観検査や曲げ試験にかけて判定するので、練習していなければ落ちます。求人票の「有資格者優遇」が見ているのは、ほぼこちら側です。
難易度は姿勢で上がる。費用も同じように上がる
下向で溶ける人が立向や上向で同じ品質を出せるとは限りません。溶けた金属が重力で落ちるので、電流もトーチの角度も運棒の速度も組み替える必要があります。料金表でも手溶接N-1F 6,468円に対してN-2P(管の固定)は23,122円で、試験の重さの違いが金額に出ています。難易度は資格名ではなく「どの姿勢まで持っているか」で見るほうが実態に近いということです。
建設現場で実際に要るのはどれか
結論は、法令系のアーク溶接等特別教育とガス溶接技能講習が土台で、そのうえに仕事の内容に応じてJISやAWが乗る、という形です。
入場のために見られるのは法令系の修了証
現場に入るとき元請が確認するのは修了証や免許証です。ここが無いと、腕があっても作業をさせてもらえません。しかも鉄骨の現場では溶接以外の資格が先に要ることが多く、玉掛け、フルハーネス、足場や鉄骨の組立て等作業主任者あたりが並行します。玉掛けの費用と会場は玉掛け技能講習は大阪でいくらかかるかにまとめています。
会社として要るのは作業主任者、個人として要るのはJIS・AW
金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習は、本人が働くための資格ではなく、事業者が選任義務を果たすための資格です。逆にJIS溶接技能者やAW検定は個人に紐づく証明で、転職しても持って行けます。鉄骨製作工場のグレード(国土交通大臣が認定するS・H・M・R・Jの5区分)でも、資格要件を満たす管理技術者と溶接技能者の配置が要件です。
鉄骨・鍛冶の会社で働くなら何から取るか

順番の結論は、法令系を先に、技量系を後に、です。未経験で鉄骨・鍛冶の会社に入った場合、現実的にはこの順で進みます。
1. アーク溶接等特別教育を受ける
入社してすぐ、あるいは入社前に受けます。実務経験が要らないので未経験でも受けられ、これがないと溶接機に触れません。計21時間なので3日程度みておきます。
2. 玉掛けとフルハーネスを片づける
鉄骨の現場では溶接より先に材料を吊る場面が来ます。玉掛け技能講習は西野田労働基準協会のAコース(未経験)で26,455円、フルハーネスは建災防おおさかで12,935円・1日6時間。鍛冶工と溶接工の違いは鍛冶工と溶接工の違いで整理しています。
3. ガス溶接技能講習を受ける
切断や加熱の作業に入るタイミングで取ります。大阪府溶接技術協会で11,100円・2日。就業制限業務なので、修了証を持たない人にガス切断をさせることはできません。
4. JIS溶接技能者の基本級、その先に専門級
1か月以上溶接技術を習得していれば基本級を受けられます。まずは会社で実際に使っている溶接方法の基本級から。合格したら3か月以上の習得を経て専門級に進みます。ここから先は毎年のサーベイランスと3年ごとの再評価試験が付いてくるので、取ったあとも溶接を続けることが前提です。そのあとは建築鉄骨中心ならAW検定、と仕事の中身で分かれます。
大阪市此花区の柴田工業ではどう取るか
柴田工業は大阪市此花区伝法で鋼構造物工事業ととび・土工工事業をやっている会社です(建設業許可 大阪府知事 許可(般-4)第158981号)。鍛冶工事、鉄骨建方、溶接、金属加工が主な仕事で、社員は6名ほど、20代が中心。資格取得支援と資格手当の制度があり、入社してから順番に取っていくのが基本の形です。ただし費用をどこまで会社が負担するかは講習の種類や時期で変わるので、全額負担と断言はしません。範囲は面接で確認してください。国の人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)もあり、雇用保険被保険者20人以下の事業主は1人1日9,500円(CCUS登録事業者は10,450円)が上限20日。日給は13,000円から25,000円で随時昇給。学歴・年齢・経験は不問で、入社2年目の社員は前職がホストクラブです。
よくある質問

溶接に国家資格はありますか?
あります。労働安全衛生法14条にもとづくガス溶接作業主任者免許が代表です。安全衛生技術試験協会が試験を行い、受験手数料は8,800円、受験資格はありません。アーク溶接等特別教育やガス溶接技能講習も法令上の資格ですが、免許ではなく講習の修了です。JIS溶接技能者やAW検定は民間の認証で国家資格ではありませんが、現場での評価は高い資格です。
未経験でも溶接の資格は取れますか?
取れます。アーク溶接等特別教育は実務経験が要らず、修了試験もありません。ガス溶接技能講習も経験不問です。技量系のJIS溶接技能者は基本級で「1か月以上溶接技術を習得した15歳以上の者」が条件なので、入社して1か月ほど溶接をやってから受ける形です。未経験でいきなり受けられる技量系の資格はありません。
溶接の資格で難易度が高いのはどれですか?
実技で落ちる可能性という意味では、JIS溶接技能者の専門級とAW検定です。AW検定は外観検査に加えてX線透過試験と機械試験まで行います。講習型は決められた時間を受ければ修了できるので、難易度という言い方が当てはまりません。溶接管理技術者は筆記と口述の知識試験で、受験に職務経験年数が必要です。
JIS溶接技能者の資格は何年で切れますか?
有効期限は1年です。期限の3か月前から期日までにサーベイランスの手続きをすると1年延長され、これを2回まで繰り返せます。そのあとは再評価試験(実技のみ)に合格して更新します。手続きを忘れると失効するので、資格を取ったあとも期限管理が要ります。
資格の費用は会社が出してくれますか?
柴田工業には資格取得支援と資格手当の制度があります。ただし対象と負担の範囲は講習の種類や時期で変わるため、この場で全額負担とは書きません。面接で、取りたい資格の名前を出して確認してください。なお日給13,000円から25,000円で随時昇給しますが、この資格を取れば日給がいくら上がる、という固定の表はありません。
溶接の資格を取りながら働きたい方へ
溶接の資格は一覧で見ると数が多いのですが、鉄骨・鍛冶の現場で最初に要るのはアーク溶接等特別教育とガス溶接技能講習の2つです。あとは働きながら順番に足していけば間に合います。大阪市此花区の柴田工業では学歴・年齢・経験を問わず募集中です。応募は電話とLINEのみで、エントリー(電話)、書類選考、面接、内定、入社という流れです。
株式会社柴田工業(大阪市此花区伝法6-2-2-409)/TEL 06-7710-5252(8:00〜17:00・土日祝を除く)/募集要項は採用情報をご覧ください。